ホテルをチェックアウトし,荷物をまとめてシャームパレスホテルへ向かう。ダマスカス一の高級ホテル。吹き抜けの優雅なロビーは,写真のとおりだ。目的のHertzレンタカーのオフィスは外だと言われてしまったので,ゴージャスホテルのロビーを堪能することもなく,ホテルの外に出る。 最初の1時間は,慣れないのと道がわからないのとで,超緊張。どこ向いても磁石がS(南)を指す。えっ?えっ!?このままじゃゴラン高原方面じゃない?危険地帯じゃない? 小さな町でスタンドを見つけて入ったら,店のお兄さんはなにか困った顔をしている。あちこちうろうろしたあげく,ドラム缶から小さなひしゃくで中身を汲もうかどうしようか迷って行ったり来たりしている。な,ないの,ガソリン!?
突然の珍客に家の人は怒りもせず,歓待してくれた。家にいるのは,女子供のみ。言葉が全然通じない。会話集も車に置いてきてしまって,カタコトも話せない。 |
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そして,写真撮影会。これがやはり一番盛り上がる。ポラロイドカメラの使い方を覚えた若いお嫁さんは,いやがるお母さんを撮ろうとする。 身内同士なら,写真を撮っても構わないのかな? そのうち,午後3時という中途半端な時間だというのに,ご飯が出てきた。いやー,こまった。こりゃ長くなりそうだぞ。 そのうち,変な外人が来てるぞと近所に噂が広まったのか,子供や大人がどんどん集まってきた。みんなとゆっくり親交を深めたいのはやまやまだけど、急がないとパルミラの夕日にも間に合わない
。悪いけどと,30分ほど滞在の後,席を立った。 |
シリアの家庭料理? スプーンから時計回りに,トマトとキュウリのサラダ,鶏肉入スープ,オリーブの実の漬物,ヨーグルト,茄子の柔らか煮,鶏肉スープ,中央は鶏肉かけご飯。 |
「さ,いこーか」とおじさんはまた自ら助手席に乗り込む。「いや,いいよ,もう多分町のはずれまでの道はわかるよ。でもま,そんなに見送りたいなら」ととりあえず乗せたまま走り出す。でも,再び町の外れに来ても,このまま行けという。 なんだかいつまでたっても一向に広くならない道に,こっちでいいのかなぁ?という一抹の不安を感じていたが,そのうち高速道路らしくなってきた。とりあえずPALMYRAが標識に出てきて,一安心。磁石も正しく北東を向いている。 バグダッドへ行く別れ道にきた。ここを右に行くと,今話題のイラクなんだなー。あと200kmも走ると。ま,南に100kmでもイスラエル,西に100kmでもシーア派の拠点で空爆の危険性のあるベカー高原,どっちに行っても緊張する地帯なんだけど。 砂漠らしい風景が広がってきた。指の形の山とか,アメリカ西部のデスバレーの光景に似ている。 食事前に,ライトアップされた遺跡を撮っておこうと,記念門に向かった。ホテルのすぐ前で歩いて5分ほどなのだ。赤い布かぶった男の人が,「マダム」と
呼びかけて,記念門の方から自転車でこっちに来る。押し売りっぽいので無視していると,戻って記念門の前で待っている。私,写真撮りたいだけなの,他は何も用はないの。ごめん。写真を撮ってホテルの方へすたすた戻ると,自転車で
ずーっと追いかけて,しつこく話しかけてくる。 乾いた大地をドライブしてきて,きれいな部屋とあついシャワーと冷えたビールが待っているとは,なんて素敵な事だろう。食事は,ホテル併設のレストランの外のテーブルで,目の前のライトアップされた遺跡を見ながら,ケバブ料理を頂いた。なんとローカルビールというのがあるのだ。ちゃんとシリアビールって書いてある。のどにしみわたるよぅ。キーン。 |
コラム:悲劇の女王 |
パルミラは,四方を砂漠に囲まれている。何時間走っても景色の変化しないベージュ一色の世界に,突如として緑に溢れた町が現れる。この砂漠の真中のオアシスは,古来シルクロードの中継地点として栄えてきた。 パルミラで滞在したホテルは,パルミラが絶頂期を迎えた3世紀に女王として君臨し,伝説として語られているゼノビアZenobiaの名を冠していた。 パルミラの女王ゼノビアは,聡明で大胆な策略家であり,絶世の美女であり,頭脳明晰で勇敢な女性であったと伝えられている。クレオパトラを敬い,自らエジプト プトレマイオス朝の末裔と称したという。 パルミラ王の第二夫人であったゼノビアが我が子を擁立してパルミラの支配者となったのはAD267年。そもそも,パルミラ王の死もその後継者であった第一夫人の王子達の死も,ゼノビアの謀殺である可能性が高いと言われている。 その後,アウレリアヌスの凱旋に連行される途中で病死したとも,ローマで裕福な余生を送ったとも伝えられるが,定かではない。 *** 何千年も経ったとは思えないほどきれいな形で残されている遺跡がライトアップされ,漆黒の闇の中オレンジ色に浮かび上がるのを眺めていると,遠い昔同じ建物の周りで繰り広げられたであろうドラマに思いを馳せ,ロマンチックな気分に浸る。 |
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<このページの最終更新日:08/10/30 >