中東

天空の城

クラック・デ・シュバリエ

ハマでは奮発してシリア随一の高級チェーンホテルであるシャーム・パレス・ホテルに泊まってみた。さすがに首都ダマスカスのシャーム・パレス・ホテルの豪華さには劣るが,昨日のハッサケの宿に比べれば部屋は西洋式で広いしロビーには噴水もあり,やはり高級感漂う。
ここのフロントの女性に,女一人で車で旅行するのって危ないことだと思う?と聞いてみた。
「危ないとは思わない。どこにでも,危ない人もいればいい人もいる。見極めれば大丈夫。」
という至極ごもっともな意見。どこの国でも同じことだね。特にシリアだから危ないってことはないようだ。

ハマからローカル道を通ってクラック・デ・シュバリエへ行こうと思って町を抜ける道を聞くと,フロントのお姉さんも,昨夜のドイツ人団体を束ねてるらしき現地ガイドのおじさんも,揃って止めたほうが良いと言う。旧市街で迷うと軽く半日はつぶれてしまいそうなので,おすすめに従って高速を通ることにした。確かにこっちの方が簡単で快適だけど,また同じ道を戻らなければならない。高速道路は周囲の景色もあまり面白くないし。でもまあ,時間の節約にはなるだろう。

フロントのお姉さんが「クラック・デ・シュバリエ(フランス語)は,現地語では カラート・アル・フサン と言うのよ」と教えてくれた。「すみませんけど,紙に書いてもらえます?」「おやすいごようよ,道に迷ったらこれを見せればいいわ。」と,アラビア語とフランス語で『クラック・デ・シュバリエ』を書いてくれた。これが後々役に立った。だって,高速道路に掲げられている標識にはクラック・デ・シュバリエなんて一言も出てこないんだもの。アル・フサンの言葉を知らなかったら,とても行き着けなかったと思う。

ついでにこのお姉さんに銀行の場所を聞いて探しに行った。が見つからない。informationの向かいだって言うんだけど。代わりにパン屋さんがあったので,朝ご飯を買った。ダマスカスの旧市街で見たようなパンだ。オレンジや緑のペーストののったチーズなしパイみたいなもの。言葉が通じないので,身振り手振りで交渉。緑はオレガノだというので,「じゃ,オレンジは何?」と聞くつもりでオレンジを指差したら,それが欲しいと思われたようで,そっちを包んでくれた。ま,いいや。
運転しながら食べてみたら,これがうまい!しまった。もう一個買うんだった。


内部はけっこう暗い.一人で周るのはちょっと恐い.子供には迷路みたいで面白いかも.

ハマからアル・フサンを目指して1時間,高速道路をおりた。道はどんどん狭くどんどん急になる。まだかまだかと思いつつ,ようやく目的地のクラック・デ・シュバリエに到着した。山のてっぺんだ。

城のほかには周囲に何もなく,天空にそびえたつがごとく。噂によると,宮崎駿監督のアニメ映画『天空の城ラピュタ』のモデルとなったといわれているが,見たところ似通った所はみられず,ただ空の中にぽっかりと浮かんで見えるところだけが共通点といえばそう言えなくもない気がする。

城の入口に着くと,勝手に車を誘導し「(車を)見ててやるから」というおじいさんがさっそく現れた。中に入れば,いくら断ってもガイドをしようとずっとついてくる男もいる。ガイドは必要ないの!と 強めに言うと,ようやく引き下がった。前方を同じくガイドなしで周っていたフランス人一家と目が合い,互いに肩をすくめる。詳細なガイドブックが,ガイド職の仕事を奪ってしまっているのだろう 。

クラック・デ・シュバリエ Crac des Chevaliers はフランス語で騎士の城の意味。もとは11世紀初頭にホムスの王が城を築いたが,1099年に十字軍の騎士団が占領し,要塞としての西洋式の改築を施した。1271年イスラム王朝であるマムルーク朝が城を陥落,さらにイスラム風の内装が施されていった。

城内では映画かテレビ番組の撮影が行われていた。出番待ちでヒマそうな人たちに,「写真撮ってもいい?」とジェスチャーで聞くと,「いいよ」と笑顔を見せてくれた。

城を出て山を降りる途中でガソリンを入れた。地元の見知らぬ男達が寄って来て,結婚してるのか?などと聞いてくる。山中のガソリンは高かろうと思い,10リッターだけ。メーターが1,2,3とあがるのに合わせて,アラビア語でワーヒド(1),イスネーニ(2),…と数の数え方のおさらいをすると,店のおじさん が子供に数を教えるように,一緒に数えてくれた。


高速道路からクラック・デ・シュバリエまでのローカル道沿いには十字架の建物が多い.この辺りはキリスト教徒居住区のようだ

アレッポに入るのもダマスカスを抜けるのもあんなに苦労したんだから,大都会ダマスカスで目的地に辿り着くのはどんなにか大変だろうと非常に緊張して臨んだら,実にあっけなく入れてしまった。中心部に近づいてすぐにKENWOODの看板が見えたからだ。ああ,よかった,あの時(3日前)道に迷っておいて。そして,おまわりさんがKENWOODのことを教えてくれて。
すんなりHertzオフィスの前に到着。「おや,無事だったかい」と3日前と同じおじさんが出迎えてくれた。出発時にオフィスでくつろいでいた客なんだかただの知りあいなんだかわからない謎のおじさんもまたいた。「日本は4つの島国なんだよね?」などと親しげに私に話しかけてくる暇なインテリさんだ。

車を返したらどっと安堵感が沸いてきた。無事に3日でダマスカスへ戻ってこられたんだ。
よかった。よかった。よかったよーぉ。

スルタンホテルは一杯だった。出迎えたのは,おじいさんではなくて若い人。明日なら空いてると言う。「明日はレバノンに行くつもりだから,いないのよ。あさっては?」と聞くと,「空いてるよ」と言う。「じゃ,あさってね」とお願いしたのに,名前も記録しない。予約ってないんだろうか?口約束?顔を覚えてる?

通りの反対側のホテルへ。こっちはちょっと高めだけど,トイレ・シャワー付きで清潔そう。テレビも冷蔵庫もある。カワと名のる男性従業員が部屋まで荷物を運んでくれたので,チップを渡したら,受け取るのを想定していなかったような素振りをした。イスラム社会ではチップは不要?
エミレーツ航空のオフィスまで歩いて行き,帰国便のリコンファームをした。宿も決まったし,車の心配ももうないし,心配事から解放されてすがすがしい気分。さて,何しよう?うきうき。


全部オリーブの漬物.

アレッポ製かどうかわからないが
オリーブ石鹸の山

香辛料. 黒胡椒, シナモン, サフラン, チリなどなど.

マルジェ広場周辺の市場や店をうろうろしてみた。屋根つきのアーケードの中には様々な店が並んでいる。商品も豊富。夕食前の買物に来ているのか,人出も多い。奥まった場所で男達が集まって水煙草を飲んでいた。商店街の中の休憩所ってところだろうか。
オリーブも香辛料もキレイに山型に盛られて陳列されていたが,売るときはこれを崩してしまうんだろうか。崩したらまたきれいに形作るのかしら。

夜はウマイヤドモスクへ入ってみた。外国人観光客用の入口は,一般市民用とは別の場所にある。女性はマント貸出所でフード付マントを借りて着用しなければならない。
ウマイヤドモスクは,世界最初のイスラム王朝であるウマイヤ朝によって8世紀に建てられた現存する世界最古のモスクである。改築を繰り返しているのだろうか,あまり古臭さは感じられない。ライトアップされ中庭の広大な大理石に灯が映っている様は荘厳。
中はまた広い。天井は高く,ゴージャスなシャンデリアがいくつも吊るされている。赤い色のじゅうたんが床一面に敷き詰められ,人々は座ってくつろいでいたり祈りをささげていたりその間をすたすた歩いていたり。線はどこにも引かれていないが,前方には男性,後方に女性が集まっている。一番前の方では,男性が一列になって立ったり身をかがめたりしながら祈っている。

夕食は,裏道にある大衆食堂でシシカバブを食す。外国人女性が一人で食堂で食べるって,どんな風に見えるんだろう?肉はおいしかった。これでビールがあればなぁ。

デザートに,フルーツミックスジュースを飲んでみた。濃厚でおいしい。でも,ちと高い。観光地価格なのか。

 

コラム:シリアの走り方

 

 

シリアでのドライブしやすさ度は,総合すると10点中4点くらいかな?アラビア文字が読めればあまり問題なし。

 

1)レンタカー

ダマスカスでは,空港にEurope Car,シャーム・パレス・ホテルにHeartzがオフィスを出している。

私はシャーム・パレス・ホテルのHeartzで,RENAULT(ルノー)のClioを距離制限なしで3日間借りた。車には,ドアにでかでかと『Rent a Car』のシールが貼られていた。シリアでは,車両の損傷事故や盗難の心配は少ないらしい。

値段は高くもなく安くもなく。日本と同じくらいだったかな?

2)運転マナー・交通量

都会は運転荒い。あおる車あり。

都会の市街地以外では交通量もさほど多くないが都会に入ると混雑で身動きも取れないほど。徒歩で横断する人に要注意。

3)ハンドル

左ハンドルで日本と反対。

4)標識

看板はアラビア語が基本。幹線道路以外では英語表記の看板が無く,心もとない。

5)道路状況

砂利道は殆ど無く,舗装されている。道の凹凸は少なく,走りやすい。ロータリーが多い

6)ガソリン

1リッターあたり 60-62.5円(2002年10月現在)

6)高速道路

無料。高速道路を逆走する車あり馬車あり自転車ありなんでもあり。要注意。

 

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<このページの最終更新日:08/10/30 >