屋久島 '01/5

2日目 晴 白谷雲水峡・後半

緑の山の中で目立つ赤い幹は、ひめしゃらの木。肌はつるつるして、さるすべりのよう。そして、触れてみると、ひんやり。とても冷たい。緩やかなのぼりをもくもくと登ってきた私達は、気持ちいーい!とひめしゃらの幹に抱きついた。

そばを声をかけながら他のパーティが通り過ぎていく。圧倒的に女性ばかりのグループが多い。女性5,6人の、登山愛好家といったいでたちの、いかにも健脚で口も達者そうな、明るくさばさばしたお姉さま方だ。どの人たちも気さくで、礼儀正しく、親しみを覚えた。なんで女性はこんなに元気なんだろう?

白谷小屋へは12:30に到着。出発してから約2時間半。原生林コースは全部で2時間半なのに、私達は、ほぼ倍の時間をかけてたっぷり楽しみながら登ってきたようだ。そんなに時間がたったかしら?時間を忘れるほど、そして疲れも知らず、ただ周囲の景色を楽しみながら歩いてきた。
ただ腹時計だけが、正確にランチタイムを知らせてくれる。
でも、なんとなく、ま四角なコンクリートのこの小屋の近くで食べる気にはなれない。川の近くなり、大木の近くなり探してみようかと、更に少し歩くことにした。
少し開けた場所に来た。頭上で人の声と足音がする。ガイドブックを見ると、この近くに辻の岩屋があるらしい。そこへの道があるのだろうか?声を頼りに登ることにした。今思えば、かなり無謀な思いつきだった。白谷雲水峡の道は、一番短いコースは整備されているが、奥の方のコースはもちろん舗装されてないし、どこが道なのか素人目にはすぐにはわからない場所がたくさんある。だから、必ずピンク色のリボンを道しるべに歩いてきたのだ。
ところが、なぜかこのとき、私達は、人の声がするからというだけで、何の目印もない坂を草をかきわけのぼっていった。本来の登山道からは少しはずれた場所だったが、そのうちに、本来の道に行き当たってピンクのリボンが見えてきた。そして、お昼ご飯にふさわしい場所を求めて、少々ハードな山道を登っていった。それは、しばらく道しるべが見えないと道に迷ったのではないかと不安に思うような、途中であきらめてしまいたくなるような山道だった。そんな道なき道をよいしょよいしょと登るうち、前方から歓声が聞こえてきた。終点は近い。そして…

突然視界が開けた。

息をのむ景色だった。

 

到着したのは、大きな大きな岩の上だった。足元には、手を広げて一歩踏み出せば飛んでいけそうな、そんな景色が広がっていた。

こんな場所があるなんて、誰も教えてくれなかったよ。
少なくとも、私の持っていた登山用ガイドブックには一言も書いてなかった。さちこの持っていた本には、そういえばそれとはわからない書き方で、遠慮がちに書いてある。ここはヒミツの場所なの?
こんなご褒美が最後にあるなんて想像もせずにやってきただけに、ダイナミックな景色に圧倒されて、私達は声もない。

山梨から来たという女性5人組+ガイドの男性、一人で来て岩の上でお昼寝をしていた大阪の若い女性。急な山道を登りきってたどり着き、この素晴らしい景色を共有しているという連帯感で、親しみが湧く。どこから来たの?と話もはずむ。
私達が広げたお昼のお弁当を見て、ガイドさんがお客さんに、「これ、知ってますか?」と説明を始めた。つい数日前に見た、お寿司をテーマにしたNHKのテレビ番組で、灰を使い、竹の皮にくるんだ手の込んだ料理、鹿児島の『あくまき』が紹介されていた。鹿児島市内でそれを見かけて、すぐさま買っておいたのだ。山梨組も、興味深く見ている。よかったらどうぞと、私達はあくまきを皆に分け、そのお返しに黒砂糖を頂いた。
へーえ、あくまきってこんな味がするのね!と一同初体験。慣れていないためか、おいしさはよくわからない。甘いもしょっぱいもなく、何か味が欲しいと思ってしまう。

ヒミツ(?)の場所とはいえ、狭い岩の上は先客万来だった。続々と人はやってくる。女性数人+男性ガイドがもう一組。そして、女の子3人組。戻る途中会ったのも、関西の元気なおばちゃん6人組。ガイドもなく自力でやって来る人々に、どうやって来たの?とガイド人が問うところを見ると、やはりここはあまり知られていない場所なのかもしれないと思う。

でろでろに疲れているであろう企業戦士のオジサン達も癒してあげたい気がするが、ここへやってくるのは女性ばかり。女達は屋久島へやって来て元気を養い、ますますパワフルになって帰ってゆく。
逆に、女性は自らの元気を回復する方法を男性よりもよく知っているのかもしれない。自分を癒す場所、癒す方法を心得ていて、これから来るかもしれない戦いに備えているのだ。力を蓄え、生き延びなければならない。
なんだか、屋久島では、女性観光客が目立った。ブームにのってあれこれ試すのも、自己を守ろうとする生まれながらにして備わった力なのだろうか?

絶景の大岩を14時に出発。白谷広場の管理棟までは1時間35分かかった。ひざが笑う。
雨・虫・寒さ対策万全で臨んだが、取り越し苦労に終わった。恐れていたほど虫に出会うことはなかった。よかったよかった。もっとも、いつもこんなに運よくいくとは限らないないので、備えあれば憂いなし、準備するにこしたことはない。
途中、いくらでも沢の水を手ですくって飲めるし、飲み物やコップも不要な素敵なハイキングコースだった。

不思議だと思うのは、この白谷雲水峡は世界遺産登録地域でも、国立公園地域でもないということ。世界遺産はともかくも、国立公園に指定されてもおかしくないと思うんだけどな。

2時間半のコースをたっぷり倍もかけて楽しんできた。管理棟に着くと、興奮冷めやらぬ小学生のように、私達は、今見てきた素晴らしい風景のことを質問したりおしゃべりしたりしていた。辻の岩屋と思っていた場所はどうも違ったらしい。へえ、そこまで行ってきたの、それはよかったねと言ってもらい、満足して駐車場に戻った。駐車場から出たところで、初めて屋久鹿と遭遇。

宮之浦へ戻ると、4時過ぎだった。フェリー乗り場近くの屋久島環境文化村センターへ入ってみた。
ぴかぴかに新しい館内で、ビデオや展示品を見学。ここだけやけに新しくてやたら近代的で、ちょっと妙な感じ。団体客には説明員がついて説明するが、個人客は素通しだ。団体割引サービスかしら?

港近くのお土産やさんを数軒みたが、案外高い。お茶をごちそうになった民芸店では、ツーデーマーチの紙ももらったのでお礼に何か買おうと思ったが、店内を何度回っても、買えそうな物がなくて困ってしまった。杉の工芸品て、貴重なだけに高い。

<超自然・屋久島ツーデーマーチ>5月第2土・日曜
屋久島の貴重な自然が世界遺産として認められたことを記念して始められたイベント。
島内外から約1000人が参加し、体力に合ったコースを楽しく歩く。参加費\2,000

スーパーマーケットも回ったが、これぞという屋久島特有のお土産は見つからない。その代わり、横浜ではあまり見ないような商品が目をひいた。
左はナガラメ(トコブシ)。105g \399。お刺身用きびなごは、グラムあたり約1円で、497gで\487。お刺身用トビウオは、2切れ(300gくらい?)で\198。

左の写真は、お昼に食べた『あくまき』づくりセット。オレンジの箱は、『あくまきの素』。その右は、あくまきを包む竹の皮。手前は、灰(2kgで\780)。

宿に戻って、すぐ夕食。周りのテーブルを見渡すと、昨晩と同じ料理ののった食卓がある。1泊目、2泊目でメニューが決まっているのかしら?私達の2泊目の夕食は、1泊目と同じ物が全くなく、相変わらず食べきれないほどのボリューム。
食事から帰ると、ちゃんと布団が敷かれていた。この短い間に、食事の直前に使った湯飲みや急須までしっかりきれいになっている。タオルや歯ブラシも新しい。そういえば、最初に部屋案内をしてくれた係りの人も、部屋の中まで入らず、客に心づけを渡すタイミングを与えずにささっと帰っていった。さっきお茶をご馳走になった土産物屋のおかみさんも、田代別館は、良心的で昔からの老舗だって言っていたけれど、大型ホテルと思ってあまり期待していなかっただけに、快適な居心地に二人してご満悦。
お風呂は割とすいていて、サウナなんてずっと独り占め。歩いたせいか、2kgくらい減ったみたい?それとも体重計が直された?きっと、たくさん食べても体重が減るほど、今日は歩いたんだなあ。

 

旅日記

1日目 鹿児島経由屋久島へ
2日目 白谷雲水峡・前半
白谷雲水峡・後半
3日目 ヤクスギランド
4日目 リバーカヤック
5日目 フルーツガーデン

 

 

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<このページの最終更新日:01/08/24 >